傘を差し、公園の中へと足を踏み入れた。

どこに行った?

少し進むとブランコや滑り台等の遊具がある場所に辿り着いた。
顔を左右に振りながら見回すと。

…いた。
あの女かどうかは確認できないものの、女性ではあるようだ。

空を見上げて両手を伸ばしながら落ちてくる雪の粒を受け止めているように見える。

俺は少しずつその女に近づく。
誰かが自分のそばまで来ているなどまったく気付かない様子で、女はただ空を見上げ続けている。

やっぱり…
あの女だ。

髪も手も肩も。
うっすらと白い雪が被っている。
こんな異様な光景を不思議だと思わない奴がいるだろうか?

俺は思い切って声をかけた。

「何してるんですか?」

突然聞こえた静寂を破る声にビクッと体を震わせ女が振り向いた。

「あ…」

「風邪を引きますよ。傘も差さずに何やってるんですか?」

「……」

俯いて黙ったままの女の手を俺は掴んだ。
そして持っていた傘を女に翳し無理矢理引っ張って歩き始めた。

「ち、ちょっと!」

漸く女が声を出したが俺は有無を言わさず強く手を掴んだまま、車まで連れていく。