見てはいけないものを見てしまったような後味の悪さがいつまでも残る。

最初からよくわからない女だったが、今はより一層それに拍車がかかっている。

別によくわからないままでいいじゃないか。
理解できない人間てのが、この世にはごまんといるんだから。
あの女もその(たぐい)なんだと思えば。

帰宅するために乗った電車の中で目を閉じているとさっきの光景が過る。
(かぶり)を振って車窓に流れる夜の街を見つめてみても。
女の面影はいつまでも消えてくれない。

クソッ!なんだってんだよ…。
なんであの女のことなんか考えちまうんだよ。
どうだっていいじゃねーか。
とにかく俺は今後一切アイツとは関わらない。

気分転換しようと携帯を取り出しどうでもいいサイトを閲覧しながら記憶を塗り替えようと試みた。

だが…
どうあっても脳裏に刻まれたあの女の面影は完全には消えてくれず。
悶々とした不快な思いを抱えながら帰宅した。

そしてその夜。
俺は夢を見た。
出てきたのは昔の女ではなく。

書店で会ったあの女だった…。