「加賀見(かがみ)、お前今日暇か？」

キャンパスの中庭を悠然と歩いていた俺に声をかけてきたのは同級生で親友の福留達也(ふくとめたつや)だった。

「なんだよ。また合コンやんのか？」

呆れたように尋ねると達也は含み笑いをしながら答えた。

「毎度お察しの宜しいことで」

「お前が俺に声掛けるのはテスト前か合コンのときだけだろーが」

「違いない」

「今日は無理。バイトあるから」

「バイト？ＪＫのカテキョ？」

「ああ」

「日にち変えらんねーの？」

「バーカ。合コンが理由で変えられるかっての」

「ほんとのこと言わなくてもいいだろ？」

まあコイツはいつもこんな感じのヤツだ。
軽いノリというか何事も深く考えないというか。
普通に考えたら欠点だと思われがちなそういう部分でも。
俺にとってはめんどくさくなくて付き合いやすい。

「受験も近いし志望校にはあとちょっと足りねーんだよ。落ちたら俺の責任になんだろ」

「カテキョがよくても本人の頭がどーしよーもねーんじゃねーの」

なかなか引き下がろうとしない達也に段々苛立ってくる。

「しつこいな、今日は。なんでそこまでして…」