「章悟さん。どうかしましたか?さっきからずっとなにかを考えこんでいるみたいな…」

心配そうに尋ねる雪穂の腕を取りグッと引き寄せ抱き締める。

「あ、あの…」

「なぁ…もうそろそろ…いいかな?」

「えっ?」

「きちんと…したいな…って」

「あ…」

俺の真意に気付いてくれたのか、雪穂がその白い頬を桃色に染めた。

「決心がついたんですね…」

「うん…。ほんとはまだ半人前の域を出てないとは思う。でも…雪穂とここで…やっていける自信はついたから…」

「嬉しい、です…」

「なんだかんだいって待たせちゃって…ごめん…」

雪穂はブンブンと頭を左右に振る。

「いいえ…正式に籍を入れるとか入れないとかは…どうでもいいんです。ただ…一緒にいられれば…あたしはそれだけで…」

俺を一途に思ってくれる雪穂の気持ちが素直に嬉しい。
でもだからこそ俺は。
彼女を本当の意味で幸せにしてやりたい。
雪穂の言っているように籍を入れることがすべてじゃないとは俺も思う。
でもこれから先、家族が増えたときのことも考えれば。
自ずとそんな結論が出たんだ。
単に書類上の契約という意味以上に、俺の雪穂に対する決意の表わし方として。
最愛の(ひと)を俺のすべてで守り抜くこと。
二人で一緒に時を刻んでいくこと。

それが俺の雪穂への愛の証。