日々の暮らしだけではなく、様々な行事に参加すると、この土地の人々が(いにしえ)からの風習を守り続けていることに驚く。

そういうところからお互いの繋がりが濃厚になるのだろう。
そこには田舎ゆえの逃げ場のなさもある。
皆と違うことをすれば住みにくくなるのだから。
自ずと周りに合わせるしかなくなるのだ。

でも俺は。
別の土地からここにきた新参者だから、周りに合わせているうちに段々溶け込めたのだと思う。
田舎の風習や慣習に、最初のころこそ多少の戸惑いがあったが。
今では案外楽しんでいる自分がいる。
雪穂の居場所を守るためだけではなく、間違いなく俺自身が苦に思っていない。

最近は簡単な方言すら自然に口に出せるようにまでなって。
いつか、俺が余所者じゃなくなって。
ここで根を張って生きていけるような気がする。

雪穂とここで家族になればなおさら。
ここは俺の故郷であり、大切な場所なんだ。

人は誰も皆。
人生という長く難解な迷路の中でさまよいもがいて、必死にそれぞれの出口を探している。
無事に出口をみつけることができるのか。
それはわからない。
たとえみつけたとしても。
そのあと何度も再び迷路に迷い混むかもしれないのだ。

でも悲観はしない。
自分を信じていれば必ず光ある出口をみつけられると思うから。