棚の高い部分にある書籍を取ろうとしているその姿を見て俺はハッとした。

アイツは…

あの女だ…!
合コンで俺に楯突いた…あのぶち切れ女…

なんでアイツがここに…
よりにもよってワインの専門書のコーナーにいるんだ?

気付かなかったふりをしてその場を去ろうとしたとき。
女が小さく悲鳴らしき声を上げた。

「キャッ…!」

その声に思わず振り向いてしまう。
見ると高い棚の書籍を取るために上った踏み台から足を外してしまったのか、無様に床に倒れ込んでいる。

驚いた俺は咄嗟に駆け寄った。

「大丈夫ですか!?」

無意識に手を差し伸べ、女を立たせるのを手伝ってしまった。

「すみません…」

女は慌てていたせいか相手が俺だと気付いていないようだ。
手を離すと改めて俺の方を見て。
やっと気付いた。
助けてくれた男が、自分の嫌いな男だと。

「あ…あなた…!」

「その節はどうも」