「そうだね。背負ってるものは大きくて重いけど…でも。考えようによっては自分の力次第でよくも悪くもなる。賭けみたいだけど…やりがいはあるよね」

「男の仕事としてはこれ以上のものはないって…思います。自分の全てをぶつけられる…情熱を傾けられる仕事だって…」

「酒造りに懸ける情熱。それがあれば…乗り越えられると思う。俺も…そうだから…」

お互いに顔を見合わせ笑顔で握手を交わす。
いつかお互いの蔵に見学に行き合おうと約束も交わし、俺は大倉と別れた。

帰り道。車の中で雪穂が嬉しそうに話す。

「ほんとに…無事終わってよかったです…」

「ごめんね、疲れたでしょ?」

「ううん!全然!楽しかった…」

「途中俺が無様なトコ見せちゃったけど…」

「あれも…災い転じて福となす。でしたね…」

「大倉さんの…おかげ」

雪穂は満面の笑顔で頷く。

「いい友人ができましたね」

「うん…。心強いよ。同じような立場の同世代の人だから」

そう言って雪穂に笑いかけると。
少しだけ不安そうに瞳が揺れているのに気付く。

「どうしたの?」

「いえ…なんだか、申し訳ないな…って」

「えぇ?なんで雪穂がそんな風に思うの?」

「だって…うちの蔵を継がなくてはいけないから…責任感じてるんですよね?」

「プッ!雪穂!それは俺が望んだの!君が悪いと思う必要ないの!」

「でも…現にプレッシャーを感じてるんじゃないんですか?」

「全然感じてないって言えば嘘になる。でも…それだけやりがいがあるし…自分の力を試せる」

「怖くなりませんか?」

「大丈夫…君が…雪穂がいてくれれば…」

「章悟さん…」

あぁ…今日は折原の家だな…。
雪穂と二人っきりの時間はなかなか持てそうにない。

「だから…何も心配しないで…俺の、傍にいて…」