「あの…よかったらまた…メールとかさせてもらってもいいですか?」

「え?」

大倉が驚いた顔をしたので俺は急過ぎたのかと反省する。

「あっ、いきなり、過ぎましたね…。申し訳ありません!」

大倉は一瞬考えるような仕草を見せたが。
最後は了承してくれた。

「…いいよ。俺も同世代の蔵人と話してみたかったんだ…」

「色々…相談とか…乗ってもらえますか?」

「お役に立てるかわかんないけど…」

「俺も…いずれは蔵を背負っていく人間として色々勉強させてもらいたいんです…」

大倉がハッとしたように俺を見る。
その瞳には優しさと強さが共存しているかのようだ。

「うん…。ただ働くだけじゃなくて…蔵を継ぐからには…大変なこともある。経営、営業、造り手としてだけじゃない、色んなことをしないといけないから」

「多角的に、総合的にできなきゃいけない…」

「そう…。時には行き詰ることもある…」

「そんなときに…自分の蔵の人間には相談しにくいなって…」

「そうだね。部外者の方が相談しやすい。でも酒蔵について素人でも困る」

この人となら…
いい仲間になれそうな…そんな気がする。

「俺たちが背負って行くもの。それはすごく壮大なものだよね。蔵そのものだけじゃなくて。日本の伝統、そういったものも背負ってるから。老舗酒蔵としてこれから何ができるか、それも考えていかなきゃいけない。蔵を立て直したときにさ。色々考えた。やっと軌道に乗って落ち着いたから。次はもっとより深く追求しなきゃいけないって思ってる」

大倉の言葉に大きく頷く。

「俺もそう…考えています。今はまだ造り手としても大成していませんから…。もっともっと勉強しないといけない。それから経営者としても…」