会場に到着した俺たちは係員に参加証を見せて中へと案内してもらった。

すげぇ…
こんな広い会場で…自分たちの酒をプレゼンできるなんて。

「中上酒造さんはこちらのブースになります」

案内してくれた係員に礼を言って俺と雪穂は商品の陳列を始めた。
さすがにホテイビールの営業時代にやっていたから陳列はお手の物。
今日のために作ってきたポップもいい感じのでき栄え。

後は…
実際に飲んでもらって。
うちの酒の美味しさを実感してもらえれば。

ワクワクした気持ちでイベントが始まる時刻を待つ。

そういえばうちの隣は…

山形県の酒蔵…か。山形も気候風土的に酒造りに適した土地だ。
有名な日本酒もたくさんある。
これは負けてられない。

どちらかというと全国的に知名度が低いうちの県に比べ。
山形と聞けば銘醸地だと思う人も多いだろう。

ここへ来る人達は素人ではないと聞いてはいる。
専門店や大手小売店の日本酒担当、専門誌のライターなども集う。
うちの蔵もそこそこ人気ではあるが、実際の認知度はどの程度なのか。
その辺りは俺もはっきりとは知らなかった。
もう少し勉強してくればよかったなぁ…。

「章悟さん、ちょっと休憩しましょう」

雪穂が温かいお茶を持って来てくれた。

「あ、ありがと」

「もぅ…章悟さん…。緊張し過ぎです!そんなに固くならなくても自然体で、ね?」

そうは思うけど…
なんとしてでも成果をあげたいからな…。