俺は高橋さんに渡す分だけをケースに入れ替える。

「これ…親方からです」

「こんなに?」

「はい…。俺たちへの今までのご支援に対する礼だって…」

「…ちょっと…待て!神の剣の斗瓶囲いまであるだねか!これは…なんぼなんでも…もらえんわ…」

「いいの、おじさん。お父さんの気持ちだし…あたし達が色々とお世話になった。章悟さんとのことだって…おじさんの力添えがなかったら…こうなってなかったかもしれない…」

「それは…そうかもしれんが…」

「雪穂の言うとおりです。俺も高橋さんに後押ししてもらってなければ…今の幸せはありませんでした…」

「ワシは…雪穂もあのままではいかん、思うてた。加賀見くんが信頼できる男だと確信してからは…。雪穂もコイツならきっと…大丈夫だ、思うてな」

「…うん。まさか自分がもう一度男の人を好きになれるなんて…思ってなかったけど…、大丈夫だった。章悟さんが…あたしのことを誰よりも大切に…思ってくれるから…」

「ほんならありがたくいただくわ。だんだん…」

だんだん…

ここの屋号にもかけて使われているそれは。
感謝の気持ちと、温かい気持ち。
その両方の意味をかけているのだと店主が言っていた。

言葉のとおり、本当に店主のあったかさが詰まった店だ。

俺と雪穂の架け橋になってくれた店主とこの店には感謝してもしきれない。