拙い唇が俺の唇と重なり。
息が止まりそうになる。

すぐに離した後の雪穂の顔が。
その白さの中で浮き立つようなピンク色に染まっているその顔が。
どうしようもなく俺の欲情を煽った。

今度は俺の方から雪穂の唇を荒々しく奪う。

彼女の息が苦しそうになってようやく離してあげるが。
どうしても止められそうにない。

「あの…家の中に入ってもいいですか…?」

言いにくそうに雪穂に言われハタと気付く。
今…外じゃねぇかよ…。

突然の想定外の出来事に翻弄されて状況判断すらできないでいる。

「どうぞ…」

って入れちゃって大丈夫なのか?
もう一人の冷静な俺が。
心臓バクバクの俺に声を掛けてくる。

大丈夫。俺は彼女の嫌がることはしない。
そう言う天使の俺と。

いやいや。飲んでるしな。ずっとずっと好きで好きで堪らなかったんだからね。
と言う悪魔の俺。

善と悪が(せめ)ぎ合い、欲望と理性が凌ぎを削る。

どちらが勝つ?
そんなの…賭けるまでもない。

俺もただの男。愛する人を目の前にし、その人から愛の告白を受けているのに。
黙って見過ごせるほど…
俺は聖人君子ではありません。

俺は迷わず寝室へ雪穂を連れて行き布団の上に寝かせる。
そしてまだ固く緊張している彼女の全身を解きほぐすように。
優しく愛でるように。
愛を全力で伝える。