君はまるで雪のように

玄関のすりガラスの向こうにぼんやりと人影を確認した俺は驚いた。

こんな時間に…一体誰が?
昨日まで都会にいたからだろうか。
一気に警戒心が強くなった。
でもこの辺りでそんな物騒な話は聞かないしな…。
そう思いながら恐る恐る引き戸を開けた。

立っていた人物を認めた俺は。
驚きのあまり声も出なかった。

そこには俯き加減の雪穂が立っていた。

「雪穂、さん…」

「ごっ、ごめんなさいっ!こんな時間にっ!」

「何か…ありましたか?あっ、もしかして…調子悪くなりましたか?」

「ち、違うんです…あの…父に…」

「えっ?親方?」

俺は何か親方に頼まれごとでもされてここへ来たのかと思った。

「父がその…加賀見さんの…ところに行け、と…」

え…
えーっと…
どういう意味だ?
さすがにアルコールが入っているせいで明晰な解答が見つけられない。

「何か…忘れ物、とかですか?」

「いえっ!そうじゃなくて…」

いや、待て待て待て待て。
その…そういうこと?
しかも父親がお膳立てしてる?

そんなバカな…
正式に交際してもいないのにいきなり過ぎる。
今俺は、自分の都合のいいように話を持っていこうとしてるだけだ。
そこで雪穂がダメ押しした。

「今夜は…加賀見さんのところへ行けって…」

えーっと…今のは…
俺の耳はアルコールのせいできっとおかしくなってるんだ。
だってそうだろ?
こんなに自分の希望に合ったように言葉が変換されるワケねぇもん。

「雪穂さん、俺…酔ってるみたいです…。なんかうまく解読できなくて…」

言いかけた俺に痺れを切らしたかのように。
雪穂が俺の腕の中に。
正確には裸の胸の中に。
飛び込んできた…。