久し振りに雪穂を交えた食事は楽しかった。
寿司が旨いのもあったが。
親方が祝いだからと神の剣の大吟醸斗瓶囲いまで用意してくれていて。
畏れ多過ぎて飲めないと遠慮する俺に。
自分で造った酒は自分で確かめるのも仕事のうちだと半ば強引に飲まされた。

飲めなくても仕事とは関係ないって言ってたくせに…
なんだかんだ言って親方も嬉しそうだった。

親方と雪穂が幸せなら。
俺はそれで充分だ。

嬉し過ぎてちょっと飲み過ぎたかもしれない。
サッとシャワーを浴びて。
明日からは今まで留守にしていた遅れを取り戻すために。
色々手伝うつもりでいた。

藤原さんも事務仕事を一人でやっているから結構手が回らないところがあると言っていたし。
途中でほっぽりだした畑も気になる。
明日中田さんに進捗を聞いてみよう。

風呂から出て濡れた髪をタオルでザッと拭く。
東京に比べるとさっぱりしていてもやはり暑いのは暑い。
朝晩が涼しいだけで田舎でも夏は暑いのだ。

上半身はまだ裸のままタオルを首にかけ。
冷蔵庫から冷やしている水を取り出した。
ひんやりした液体が喉を心地よく通り過ぎていく。

ハァ…
旨いなぁ。やっぱりこっちの水は断然美味だ。

窓を開けて少し外の風に当たるか…。
それか夕涼み、もうすっかり夜だけど。
ちょっとだけ外へ出て涼むか。

そう思った俺は上がり框を下り、サンダルをひっかけた。