君はまるで雪のように

「フフッ…加賀見さん…なんだか子供みたい」

屈託なく笑う雪穂に俺も笑顔を返す。
が、顔は笑っていても心の中は笑っていない。
あの医者とは今後通院でも会うんだろ?
あれだけイケメンで。
しかも精神科の医者ときてる。
医者と患者は信頼関係で結ばれているんだから。
俺の立場が危うくなってしまうじゃないか!

今後通院にも付き添わなくては!
俺が安心していられない!

雪穂が着替えると言ったので俺は病室を出た。
談話ルームに移動し親方に連絡を入れる。
雪穂が今から家に帰ると報告するためだ。

親方は電話口でもわかるくらい声が明るかった。
きっと誰よりも心配していたのだろう。
親方の気持ちを考えると本当に申し訳なさでいっぱいになった。

病室へ戻ると雪穂が着替え終わり椅子に腰かけていた。

「終わった?」

「はい…」

雪穂が手にしている小さなボストンバッグをスッと奪い。
腕を優しく取って立ち上がらせる。

「じゃあ…コールして帰りますか」

「はいっ!」

満面の笑顔の雪穂を見ていると肚の底から幸福感が沸き上がってくる。

あぁ…今すぐ抱き締めたい…。
でもここは病院だし。雪穂は病み上がりだし。
とりあえずもう少し我慢しないと。

大丈夫。これまで我慢できたんだ。
あと少しくらいの我慢なんてなんともない。

はずだけど…