振り向くとそこには。
白衣姿のメガネイケメンがドアに手をもたせ掛けて立っていた。

俺の動きを察知して雪穂が俺の腕から顔を覗かせる。

「あっ…先生…」

「どうも。お取込み中失礼」

なんだコイツ…。
雪穂の…主治医か?
それにしても嫌みな感じのヤツだ。

俺は仕方なく雪穂を腕から解放し椅子に座り直した。

「あの…」

雪穂がオドオドしながら医者を見上げている。

「回診の時間ね」

医者は抑揚のない声でそう言った。

「あっ…じゃあ俺は…外、出ときますんで…」

医者はメガネの奥の冷たい瞳で突き刺すように俺を一瞥すると。

「ご家族はいてもらって構いませんよ」

と不愛想に言った。

家族…
俺、は…雪穂の…家族、なんだ。

雪穂と目でコンタクトをとると。彼女も恥ずかしそうに頷いた。

医者は事務的に雪穂のバイタルチェックをし。
問診を始めた。

「調子はどうですか?夜は眠れる?食欲は?」

「はい…。今日は調子がいい、みたいです…。夜は何度か目が覚めましたけど…食事は全部取れました…」

「うん。いい傾向だね。多分今夜はよく眠れるんじゃないかな」

そう言ってチラッと俺を見る。

わざとらしいんですけど…
はっきり言えばいいでしょうが。
俺のおかげで雪穂の心が安定したって。
あれ?
もしかして自分の力及ばずで悔しくなっちゃった?

俺は心の中で医者に毒を吐いた。

「どんな薬よりもね。人の温かさが薬になる。君はそれをわかっているから。きっと大丈夫」

なんだよ…
この先生、見かけと違って案外いいヤツじゃねぇか…。
ちょっとだけ
見直した。