「雪穂さん…その、なんとかっていうクソジジィはどうでもいいけど…。蔵の皆には感謝です…。俺まで庇ってもらって」

「それは…加賀見さんが一生懸命頑張ったからです…」

「でも…俺が来たせいで、俺のワガママのせいで雪穂さんがまた傷ついてしまった…」

「加賀見さんのせいじゃありません…。ここへ戻るのを決めた時点で。周囲の好奇の目に晒されるのも覚悟しなければいけなかったんです…。でも…加賀見さんから連絡が途絶えがちになって…ちょっと心が弱くなってしまって…」

再び腕の中の雪穂を強く抱き締める。

「ダイジョブ…もう二度と離れないから…」

「加賀見さん…」

「愛してる…雪穂…」

「……」

自然に口をついて出てしまったが…
時期尚早だっただろうか。
腕の中の雪穂は今。俯いているのか俺からはその表情を伺い知ることができない。
喜んでくれているのか。
悲しんでいるのか。
見極めることが…できない。

「明日…」

「ん?」

「明日も…来て、くれますか…」

「あ…当たり前だろ?毎日来るよ…」

「ありがとう…」

良かった…
さっきの俺の言葉に対しての答えじゃないけど。
嫌がってはいない、ってことだから。

「早く…家に帰りたい…」

「そうだね。先生に聞いてみないといけないね…」

「明日診察があるので…聞いてみます。いえ…お願いしてみます…、帰ってもいいかって…」

その時ふと背中に誰かの気配を感じた。