「ただいま…」

こんなに気持ちが溢れそうになっているのに…
平凡な言葉しか出て来なかった…。
君の元へ。
約束どおり…
戻ってきたよ…。

「お帰り、なさい…」

感極まって再び抱き締めた。
こうやって彼女に触れられる日が来るなんて。
初めて出会ったときには想像もしなかったけど。

こんなにも愛しくて大切で守りたくて。
今まで感じたことのない様々な感情が俺にあったなんて。
雪穂に出会って初めてわかった。

「加賀見さん…」

「ん?」

抱き締められたままの体勢で雪穂が囁く。

「心配かけて…ごめんなさい…」

「そんな…俺のせいだから…」

「加賀見さんを信じて待ってるって…言いました。それなのに…信じられない自分が許せなくて…」

「君のせいじゃない。俺がもっとしっかりしていなきゃいけなかった。それに…環境への配慮も…頭になかった…」

雪穂の体が俺の言葉に反応し、僅かに強張った。

「どうして…それを?」

「藤原さんが…それとなく匂わせた。俺、いくらここに根を下ろしたつもりでもまだまだ余所者なんだなぁって。もっともっと信用してもらえるように頑張らないと」

「すみません…」

「君が謝る必要ないよ、君だって被害者なんだ。無関係の人達に好奇心だけで晒し者にされれば…誰だって傷つくよ」

「でも…皆さんが庇ってくれました…蔵の皆が…」

雪穂から聞いた事実に。
俺の胸は感動と感謝で熱くなった。