「何でもする。言って欲しい。君が望むこと、なんだってするから…」

「加賀見さん…お顔を見せて…」

「えっ…」

カーテンを掴む指が震えている。
俺の誠意が伝わったのか?
許してもらえるのだろうか?
いや、許してもらえなくてもいい。
再び彼女の姿を見られるなら。
今初めて気付いた。
彼女を心の底から求めていたのは誰でもない俺だった。
彼女のいない毎日が。
会えない日々が。
俺の心をこんなにも無味乾燥なものにしていたんだと。

シャー…
カーテンを開けたすぐそこに。ベッドの上に。病衣姿の雪穂が血の気を失ったような白い顔で。座っていた…。

思わず抱きしめる。
その華奢な体がしばらく会わない間にさらに細くなっていて。
少しでも力を入れれば容易く折れてしまいそうで。
俺は壊れ物のように雪穂を(くる)んだ。

「ごめん…ほんとに…淋しい思いをさせて、苦しい思いをさせて…」

気が付けば涙が流れている。
俺は本当に。
雪穂に出会ってから涙脆くなった。

「加賀見さん…これだと顔が…見えない…」

「あっ!」

思いのまま雪穂を閉じ込めてしまって。彼女の望みである顔を見ることが不可能になっていたのにも気付かなかった。

そっと雪穂の体を離す。
離しても腕だけは掴んだまま。
離したくなかった。

そして雪穂の潤んだ瞳を熱っぽく見つめた。