なんてこった…。
あれだけ雪穂を傷つけたヤツを罵倒し憎んでいた俺が。
俺自身が。
誰よりも大切な彼女を傷つけてしまった…。

なんて言って謝ればいい？
償えばいい？

『あのぉ…加賀見さん…。それで帰って来られるんですか？』

「当然ですよ。俺の帰る場所はそこしかありませんから」

『そう…それならええんだけど…。相変わらずこっちには…その…噂話が好きな連中がいるから…』

彼女に心ないことを言った人間がいるのか？

「藤原さん…彼女に誰かなんか言ったんですか？」

『…詳しくはわからんのですけど…、どうもそういう話が聞こえてしまったようで…』

なんて…なんてことだ…。
酒蔵の人達が俺に友好的だからって、町の人達皆がそうだとは限らない。
俺の認識の甘さだ。

雪穂、すまない。
俺が結果的に君を苦しめてしまった。
許してくれ…。

「藤原さん…俺、今からすぐに戻りますんで。病院教えてもらえますか？」

『今すぐっていっても…夜になりますでしょ？』

「飛行機で戻ります。午後には間に合う」

藤原さんから彼女の入院先を教えてもらい俺はタクシーを探す。
運良くとまってくれたタクシーに乗り込み空港へ急いだ。