雪穂…。
彼女になんて言って説明したらいいのだろう。
この結果を聞いて。
納得してくれるだろうか…。

そういえばこのところまともに連絡していない。
ちょっと連絡しておこう。
このまま戻るにしても恐らく早い時間には戻れない。
夜遅くなってしまうだろう。

久し振りに呼び出した彼女の番号。
発信してからずっと流れる呼び出し音。
なかなか出てくれない。
俺が連絡を怠ったから拗ねてるのか?

でも実際は…
俺が思いもしない状態になっていた。

雪穂の携帯が繋がらなくて不安に苛まれた俺は思い切って蔵に電話を入れた。

『ありがとうございます。中上酒造、藤原でございます』

「藤原さん!加賀見です」

『あ…加賀見、さん…』

事務の藤原さんの受け応えに違和感を覚える。
歯切れの悪い様子が伝わったからだ。

「あの…雪穂さんは母屋にいらっしゃいますか?携帯に電話したけど出られなくて…」

『えっ…と…。今私は事務所にいるからわかりませんねぇ…。しばらくしてからかけ直されれば…』

おかしい…。
いつもなら藤原さんはお節介なくらいの世話焼きなのだ。
電話を保留にして雪穂を呼びに行くような人なのに。

それに。
こんな時間から雪穂が家を空けるとも思えない。

「親方は。親方にかわってください。それが無理なら頭…岩田さんでも誰でもいいです。電話に出られる人を出してください」

『そう…言われても…』

藤原さんの態度がいよいよおかしくなった。