翌日。
俺は荷物をまとめてリビングに下りた。

手荷物を持った俺を見て家族は一瞬驚きの表情を見せたが。
すぐにいつもの表情に戻った。

「帰るのね…」

母はそう言った。

「俺がいても…何もできないから…」

言いたいことは山ほどあったが。
今ここで誰を責めるのも違うと思った。
親父が。母が。姉が。
一番長く一緒に生活をしていた家族が決めたのならば。
俺がとやかく言う権利はない。
そう判断したから。

「ありがとう…章悟。短い間だったがお前と久しぶりに一緒に過ごせて…嬉しかったよ…」

「親父…なんで…」

言いかけてやめた。何をどう言っても変わらない。
それがわかったから出て行く決心をしたんじゃないか。

「元気でな…」

親父の顔をこれ以上見ていられず、俺は無言で家を飛び出す。

バカ野郎!バカ野郎!
…なんで…わかってくれねぇんだよ…
悔しくて悲しくて腹立たしくて。
とめどなく涙が溢れてくる。

わかんねぇ!俺には全然わかんねぇよ!
親父が何を考えてるのか。
なんで大切な人達を平気で悲しませるのか。

俺なら絶対しない。
悲しませるようなことは絶対に。

複雑な感情のまま歩き続けて気が付けば。
子供の頃よく来ていた公園を見つけた。

中に入って散策してみる。
無人のベンチを見つけて座り。少しだけ冷静さを取り戻した。