親父を説得しようと何度試みても。
その考えは変わらなかった。

なぜそんなに死に急ぐ?
この世に未練がないのか?
俺の疑問は尽きなかった。

俺の気持ちがあまりにも親父に通じなくてストレスを強く感じるようになった。
俺の願いには聞く耳を持たないのか、と。
俺だけじゃない。
本音を言えば母も姉も。
父には生きていて欲しいと思っているに違いないのに。

それを理解してくれない親父がただ悲しかった。

精神的な疲労が重なり。
いつの間にか俺は身体的にも疲弊していった。

定期的にしていた雪穂への連絡も…
滞りがちになった。

毎日毎日家族で話し合いを重ねる中、俺一人だけが皆と違う意見を持っているという事実は。
この家の中で俺はやっぱり孤独なんだと思い知らされるようで。
堪らなく虚しかった。

俺は一体何のためにここにいるんだ。
俺の意見なんて聞いてくれないなら。
ここにいる必要ないじゃないか。

そうだよ。俺が自分の仕事を放り出してまでここにいる理由。
家族としてできるだけのことをしたいと思っているのに。
それを受け入れてもらえないのなら。

帰ろう。
雪穂の待つあの町へ。
俺を受け入れてくれたあの蔵へ。