俺が家に戻ってから早一ヶ月が経とうとしていた。

親父の病気は手術して切除すれば生存率は決して低くないというものだった。
検査の結果。
幸いにして体の他の部分は悪くなかった。
なので悪い部分だけを取り除きさえすればいいらしい。
詳しいことはよくわからないが、手術すれば助かる可能性があるという話だった。

あとは親父自身がどうするか決めなくてはならない。
が。
肝心の親父が手術に乗り気ではない。
年齢的にもまだ手術には充分耐えうるだけの体力もある。
なのになぜ拒否するのか。
生きることへの執着が薄いのか。
その理由を親父は明言してくれないのだ。

母が頼めば考えてくれるかもしれないと尋ねてみたが。
今まで好き勝手させてもらったから自分は強く言えないのだと、弱々しく微笑むだけだった。

だからって。
このまま手をこまねいて見ているだけでいいのか?
それで本当に後悔しないのか?
できるだけのことをしたって言えるのか?

俺が責める口調になると必ず姉が止めに入る。
両親は両親の考えがあるのだろうから、いくら子供でも口出ししないほうがいいと。
それは俺だって理解できる。
できるけど。
これが人の生き死にの問題じゃなければ俺だってここまで言わない。
何もせずに死を待つというのは
正しい選択だとは思えないから言うんだ。