『加賀見さん？』

「あっ、申し訳ございません。え…っとそれでご用の向きは？」

『あの…宜しかったらまた…お会いできませんか？…できれば…二人で…』

「は？」

『ダメ…ですか？』

「えっと…申し訳ありませんが仕事中ですので…。そういったお話はちょっと」

『あっ…ごめんなさい…。じゃあ携帯の番号を教えていただけませんか？』

いや…それはもっと…困る。

「それは…でき兼ねます」

『どうしても…ダメですか？』

「申し訳ございませんが」

『あの…私のこと覚えてないんですか？』

コイツ…どういう神経してんだ？
仮にも仕事中だぞ？
あり得ないだろ…

「ご用がなければ失礼します」

俺はそう言って電話を切った。
どうにも苛立って仕方がない。
ああいう女は簡単に男を釣れると勘違いしている。
そんじょそこらの男たちと一緒にされたんじゃたまったもんじゃない。
俺は仕事より女を優先する男とは違うんだよ。