今の雪穂の言葉が俺の全身を貫く。
雷に打たれたかのように。
痺れて。
頭の中が真っ白になった。

”加賀見さんと幸せになる”

このワードが俺の頭の中で何度も何度もリフレインする。
大昔のレコードの針飛びのように。
同じ部分を何度も繰り返し行ったり来たり。

『加賀見さん…。お願いです…。私たちの幸せのために…もう一度ご家族と話をしてください。そして…きちんと話をつけて…ください』

彼女の涙ながらの懇願。
それに応えない俺なら。
彼女と一緒に幸せになる権利など
…あるはずがない…。

雪穂はいとも簡単に俺の…
家族に対する憎しみや不信感を、そんな諸々を超越して。
相対する必要性を…教えてくれる。

「わかりました…。あなたと幸せになるためなら…なんでもします…」

『加賀見さん…ありがとう…』

律儀に礼を言う雪穂が愛しくて愛しくて。
彼女のためなら。
たとえどんなに罵倒されようとも、叩きのめされようとも。
命さえ取らないでくれるなら。
それならいいと思えた…。

「礼を言うのは俺です…。ありがとう…たとえどんな結果になっても…。あなたに恥ずかしくない、説明をできるような結果にはしますから…待っていてください…」

『はい…』

雪穂との通話を終えた俺はその指で再び姉の番号に発信した。

今度はすぐに繋がった。