『もう一度きちんと…ご家族と話してください。きちんと会って、です。電話ではなく』

「だって…そんなの…必要ないでしょう?さっきの電話の話したでしょう?あれ以上でも以下でもないんです。大した病気でもなんでもないのに…俺を振り回したいだけなんです…」

『あたしは…違うと思うんです…』

「って…何を根拠に?」

『理由は…なくて…あの。ただの直感なんですけど…』

「申し訳ないですが、たとえあなたの直感でも信じられません。そんな生易しい連中じゃないんですよ、ヤツらは…」

『加賀見さん、ダメです。ご自分の家族を貶めるようなことを言っては』

「雪穂さん。あなたが心配してくれるのは嬉しいです。でもね。アイツらのことは俺が一番よくわかってるんですよ。どういう人間なのかっていうのもね。だからいいんです。俺はアイツらとは生きる世界が違うんで」

『でも…ダメです…。このままだったら…』

そこまで言って雪穂は黙る。

「何が…ダメなんです?このまま放置していても何も怖くなんてありませんよ?」

俺は雪穂が怖がっているんだと思っていた。
元居た会社に乗り込むような非常識極まりない俺の家族が。
もしかすると雪穂や蔵の皆にまで。
何か仕掛けてくるんじゃないか、と。
そう訝しんでいるのだと。

でも彼女の本心は違った。

『怖くなんてありません…。そうじゃないんです…。このままだったら…私、私…加賀見さんと…幸せになれない…』