折原の住まいはワンルームではないマンションだった。
独立した部屋が二つもあって。
さらにダイニングキッチンと、トイレとは別に風呂がある。

この辺りでその間取りなら家賃は相当なものだろう。

二つある部屋のうちのひとつを使ってくれと折原に言われた俺は早速荷物を持って部屋に引っ込んだ。

まずは姉に電話だ。それをしなきゃ始まらない。

携帯から久しぶりに姉の番号を呼び出す。
変わってないという保証なんてないが。
呼び出した番号に発信してみた。

コール音が虚しく響き一向に出る気配がない。
自分たちの都合で勝手なことを平気でやるくせに、いざこちらが連絡をとろうとするとこのザマだ。
やっぱり俺は。
ヤツらが気に食わない。

なんだか時間の無駄だと思えてきた。
そっちが出る気ないんだったらもういい。
そう、思ったところで。
不機嫌そうな、聞き覚えのある声に切り替わった。

『…アンタ…一体どういうつもり?』

姉だ。
やっと出たと思ったらいきなり上から物言いは相変わらず。
予想していたとおりとはいえ、やはりいい気はしない。

「どうもこうもない。俺を探してんじゃねぇの?だからこうやって連絡してんだけど?」

『探すに決まってるでしょ!大変なことが起きてんだから!』

大変なこと、ねぇ。
その手のセリフに何度騙されたか。
どうせ大したことないに決まってるけど。
一応聞いとくだけ聞いといてやろうか。

「大変なことって?」