君はまるで雪のように

席に落ち着いた折原はコーヒーをゆっくりと飲んでいる。
営業職が忙しさの中でホッと一息つける瞬間。
俺もそうだった、はずなんだが。
今は目の前の折原を違う次元の人間のような気持ちで見ている。

「それで折原。悪いが今日いきなりは難しいから。とりあえずお前のうちにお邪魔させてもらっていいか?」

「もちろんですよ。そのつもりなんで」

折原は笑顔でそう言った。

どこかで食事でもするかと折原に問われたが。
とにかく人が多い場所を一刻も早く離れたかった俺はコンビニ弁当で充分だと言った。

折原の住まいの近くのコンビニで適当に食料を買い込み、帰宅した。

「お邪魔します」

「狭いトコですけど、どうぞ!」

上がってみると男の一人暮らしのわりによく片付いている。
付け焼刃的に片付けた感じではなくて。
日頃から整理整頓されている様子が伝わってくる。

「疲れたと思うので早速食べますか!」

「悪いな。なんだか俺に合わせてもらって…」

「いいですって!ただでさえも気乗りしない上京だったんですから。無理しないで寛いでください!」

「寛ぎたいところだが…とりあえずメシ食ったら姉に電話してみるよ」

「ダイジョブっすか?」

「何日もいる気はねぇからな。さっさと終わらせる」

とは言ってみたが。
得策があるわけでも何でもない。
ただ俺が一日でも早く戻って雪穂を安心させてやりたい。
そう思っているだけだ。

「うちなら大丈夫ですから。合鍵あるんで渡しときますよ」

「えっ?そんなわざわざ…」

「わざわざじゃないです。常に合鍵を二つ三つ作ってあるんで。そのうちの一つです」

合鍵を二つ三つ?何のために?

俺の疑問に気付いたのか折原が屈託なく答える。

「女友達が何人かいますんで」