今日折原と会った理由を包み隠さず彼女に話して聞かせた。

彼女は俺の話を黙って聞いた後、呟くように言った。

「私も…加賀見さんご自身が解決されなくてはいけないと…思います。大丈夫です…今の時期は…閑散期で仕事も落ち着いていますから…」

「実は…先日親方に言われたんです。里帰りしろって」

「えっ?」

「俺が家族と断絶してることを親方はあなたから聞いたとおっしゃってました。…それで俺を心配してくれて…。でもそのときの俺はまさか事態がそこまで深刻だとは、折原が言っていたような事態になっているとは知らなかったので、断ったんです。でも…状況が変わりました。明日、親方にも事情を説明します…」

雪穂は表情を暗くして俯いた。

「加賀見さんのプライベートな話を父に勝手にしてしまって…ごめんなさい…」

「いいんですよ。あなたが俺を心配してくれてのことなんですから…」

「それで…あの…」

「はい?」

「…て…ください…」

雪穂の声は小さすぎて全部聞き取れなかった。

「すみません、よく聞こえなかったんで…もう一度言っていただけますか?」

「帰って…きて、くださいね…」

そう言った雪穂の目には。
今にも零れそうなほどの涙が…
溜まっていた。

その顔を見た瞬間俺は。
ほとんど衝動的に彼女を抱き締めていた…。

突然の俺の行動に驚いた彼女が一瞬身を固くしたが、そのまま俺の腕の中に収まったままでいてくれた。

俺の心臓は恐ろしいほど高速で拍動している。
初めて触れた彼女の。
柔らかな体と鼻腔を刺激する香りに倒れそうになる。

が。
倒れている場合じゃない。
俺は優しく言った。