君はまるで雪のように

さも何でもないことのようにサラリと言ってのけたが。

コイツが営業においては結構な策士だと気付いてはいた。
だから店主の気持ちをうまく誘導して。
知りたい情報を得ることに成功したんだろう。

「ちょっと加賀見さんのお母さんとお姉さんに悪者になってもらいましたけどね」

その笑顔が恐ろしい…。
コイツは。
その人当たりの良さそうな顔の下に。
とんでもない魔物を棲まわせていそうだ…。

「元々悪者なんだからいい。それで店主を揺さぶって…ここを聞き出したんだな…」

細かい内容なんてもう。
どうだってよかった。
事実はたったひとつ。
今俺の目の前に折原がいるということ。

そして俺の決断を待っているということ。

「それで。彼女との未来は見えてきたんですか?」

見えてる。今は。
でも…
このままじゃその明るいはずだった未来に暗雲が立ち込めるのも時間の問題というわけだ。
俺が動かなきゃ。
掴める未来も掴めなくなると。
折原は言いたいのだろう。

「見えてる、と思ってたけどな。このままじゃ…今のままじゃダメだって…お前は言いたいんだろ?」

折原は再び口角を上げて言った。

「さすがは加賀見さんですね。職人にならなくても営業でも行けますよ」

何を呑気な。
営業もできればいくらでもやるよ。
なんでもやるつもりで来たんだから。
でもまずは。
蔵人としての修行だ。
まだまだ半人前なんだからな。

「しばらくは…酒蔵の修行に専念する。そんなに簡単に習得できるもんじゃないし、な」