「暖々の店主だろ?」

「は?」

「お前に俺の情報流したの、だよ」

「……」

沈黙は肯定。俺はそう解釈する。
違うなら普通、必死に言い訳するだろ?

「折原。俺は別に怒って言ってるわけじゃねぇよ。それしか考えられないだけだ。それに…あそこの店主は…俺をちゃんと理解してくれてるし人を見る目だってある。店主がお前に俺の居所を教えたってのは。大丈夫だと思ったからだろ」

「加賀見さん…」

折原は項垂れた。そして認めた。俺の言ったとおりだと。

「店主に言われました…。恐らく…新天地で死にもの狂いで頑張ってるはずだから…穏便にしてくれって。心を乱すようなことだけはしないでくれ…って」

店主…
俺を慮って…そんなことを…

「でも俺が事情を話すとやっぱり家族が断絶してるのはよくないって…」

店主も親方と同じことを言うんだな…。
やっぱり人の親だから…

「あのなぁ折原。うちはずっと昔っからこんなんで。俺は一人で生きて来たんだ。お前だってわかったろ?あの二人が異常なほど俺に執着してるって。それに嫌気が差すのは当然だろ?」

「それは…そうかもしれません。でも。いつまでも逃げられるわけじゃない。いくら縁を切ったと思っても、血の繋がりまでは切れないんですよ?」

「関わりたくないんだよ…」

「それって単なるワガママでしょ?関係ない人に迷惑かけてるの、黙って見過ごすんですか?それが自分の家族なのに?」