「けど、伊藤くんはもちろん、お前にだって…。具体的にどこへ行くとか何をするとかも言ってなかっただろ?聞かれたって答えようがないよな?まぁそういっても今こうやってお前が俺を訪ねて来てるって事実があるから…調べればわかるってことなのかもしれないけど…」

「いえ。俺は後から調べたんですよ、ここの場所。お二人が会社に乗り込んで来たときは本当に何も知らなかったんで。答えようがなかったんです」

「そうだよな…」

「でも…お二人の話を聞いてて…最初は面食らうばっかだったんですけど…。よくよく聞いてみたらただ、加賀見さんを心配しているだけで…。行方さえわかればそれでいいって言われたんですよ。まぁ…方法は多少、難ありですけど…」

「多少、なんてかわいいもんじゃねぇよ。子供が小学生でもあるまいに。いい大人が恥ずかしいことしてんじゃねぇよって話だよな。ま。普通じゃねぇんだけど…」

「それで俺。やっぱり加賀見さんは一度東京(あっち)へ戻ってきちんと説明すべきだと思ったんです。だから…ここまで来たんです」

「それよりお前。なんでここがわかったの?」

「それは…」

話ながら色々と考察してみた。
コイツがここを知り得た理由。
可能性はひとつだけだ。

居酒屋、暖々。

コイツは俺が唯一あの店に連れて行った人間で。
あのとき。
店主と俺との微妙な空気を。
コイツなら訝しんだに違いない。
あの店主からここを聞き出す以外に。
それ以外に方法はないんだ。