夜の田舎道は本当に車の往来が少ない。
指定された折原が宿泊するホテルまではおよそ十五分と聞いていたが、実際は十分かかるかかからないかで到着してしまった。

駐車場に車をとめ。携帯から折原の番号に発信する。

『もしもし。加賀見さん、早かったっすね』

「道が空いててな。それでどうすればいい?今駐車場だが」

『下のレストランに向かいますんで。加賀見さんも中に入ってください』

「わかった」

言われたように入り口の自動扉をくぐるとビジネスホテルのフロントと、右奥にレストランがあった。

「いらっしゃいませ」

ホテルマンが声を上げると同時に折原が現れた。

「加賀見さん!お待たせしました!」

折原と連れ立ってレストランに入る。
結構な広さがあって席も相当数ある。
でも満席になるなんてこと、あるのか?

そんなどうでもいいことを考えながら、従業員たちからは遠い席をわざと選んだ。
別に知り合いがいるわけじゃないが。
なんとなく、今から展開される会話を従業員にも聞かれたくないと思った。

メニューから適当に注文し。
運ばれた水を飲む。

折原はおしぼりで手を拭いたあと、それを丁寧に畳んで置いてから話を始めた。

「前置きなしでいきなりですけど。実は会社に加賀見さんのお母さんとお姉さんが来ました」

「はぁ?」

正に想定外。っつーか、なんだそれ?
親が、いや正確には母親と姉。ソイツらが会社に来るとか。
有り得ねぇだろ?