「なんのために俺がそこまでしないといけねぇんだよ!?そもそもいきなり来やがってっ。連絡もなしにっ!」

「連絡したところで無意味じゃないですか。どうせ会ってくれる気なんてないでしょ?だったら突撃したって同じだって思ったんですよ」

「お前な…」

「怒る気持ちはわからなくもないです。加賀見さんの気持ちは聞いてましたし…。過去を振り返る気もないってわかってます…。でもね。俺がなんでここまでしたのか。相当の理由があるんだって、どうして考えてくれないんです?なんで一方的に責めるだけなんですか?加賀見さんの中で俺の印象って。状況判断もまともにできないような男なんですかね?」

折原の言葉には充分すぎるほどの説得力があった。
俺は突然のコイツの来訪に驚きすぎて冷静さを欠くあまり。
本来のコイツの性格まで誤解していたのかもしれない。

コイツは。
折原というヤツは。
見た目の軽薄さとは裏腹に真面目に物事に取り組む男だった。
相手の意図も。
その場の空気も。
見事に読んで動ける、そんなヤツだった。

それをわかっていたはずなのに俺は。

コイツが東京の人間ってだけでここまで警戒するなんて。
俺もこっちに染まってきたという証拠かもしれない。