「お言葉ですが。あなたにそこまで言われるのは納得できませんね。あなたには迷惑をかけていないと思いますが?」

俺がそう言うと目の前の女が言葉に詰まった。道理だとわかったのだろう。

「それは…そのとおりです。別に私に迷惑をかけてはいません。でも…ワイン以外のお酒を蔑まれるのは許せないんです」

許せないからって難癖つけられてる俺の身にもなれよ?
俺は思ったままを女にぶつけた。

「それはあなたの個人的な事情でしょう。私の意見を覆す必要はないと思いますが?」

「確かに…私の勝手な言い分だとわかってはいます。だったらこれ以上私の前でワインの話はしないでもらえませんか」

どうあっても引かないつもりだな…。まったく可愛げの欠片もない女だ。

「ワインを飲んでいるのでねぇ…。あなたに指図される筋合いもない」

俺の言葉を聞くや否や女は勢いよく立ち上がった。
そしてバッグを持ってその場を逃げるように立ち去った。

なんだ?あの女?
失礼にもほどがある。
いきなり初対面の相手に言いたい放題で、あまつさえケンカ腰で。
あの女のせいで折角のワインと料理がマズくなるじゃないか…。

仕切り直して飲み直そうと思っていると折原が来た。

「加賀見さん…どうしちゃったんです?」

「何がです?」

「らしくないですよ、あんなに血相変えて」