翌日。
親方から俺に畑の指導を頼まれた中田さんは嬉しそうに早朝からやってきた。
「加賀見。お前ほんによう働くのぅ。畑は案外手強いけんの。野菜も酒と一緒で自然に任せるところがああけん。ただ野菜は酒と違て失敗してもダメージはねぇ。せいぜい食卓に並ぶ種類が減る程度だけん。あんま無理せんだわ」
「はい。宜しくお願いします」
その日からしばらくは土を肥やすための作業を中田さんについてやってみる。
農機なんて操縦したことがない。
最初はうまくいかなくて四苦八苦した。
毎日汗と泥にまみれて。
酒造りとは全く違った苦労があったが俺が自ら望んだのだから。
弱音を吐くわけにはいかない。
それに。
相変わらず雪穂の作る昼食にありつけるのもありがたかった。
酒造りが終われば俺に賄いをする必要もなくなるだろうと諦めていたのだが。
雪穂は自分の仕事だからと言って、畑仕事をする俺と中田さんの分も毎日用意してくれるのだ。
母屋で食べるのが主ではあったが、天気がいい日は畑の片隅にレジャーシートを敷いて、弁当仕立てにしてくれた昼食を食べるのもまた楽しかった。
弁当を広げて食べるなんていつ以来だろう?
子供のころ。
運動会とか遠足とか。
弁当が必ずいるときもうちでは。
買って来たコンビニ弁当の中身を弁当箱に入れ替えるだけで。
手作りの愛情こもった弁当なんて食べた記憶はない。
だから雪穂の弁当はその味だけではなく、愛情も感じられて殊更旨かった。
そうやって穏やかに過ごしていた矢先。
俺の中ですでに遠い過去に関わった人物の一人となっていた男と。
まさかの再会が待ち受けていた…。
親方から俺に畑の指導を頼まれた中田さんは嬉しそうに早朝からやってきた。
「加賀見。お前ほんによう働くのぅ。畑は案外手強いけんの。野菜も酒と一緒で自然に任せるところがああけん。ただ野菜は酒と違て失敗してもダメージはねぇ。せいぜい食卓に並ぶ種類が減る程度だけん。あんま無理せんだわ」
「はい。宜しくお願いします」
その日からしばらくは土を肥やすための作業を中田さんについてやってみる。
農機なんて操縦したことがない。
最初はうまくいかなくて四苦八苦した。
毎日汗と泥にまみれて。
酒造りとは全く違った苦労があったが俺が自ら望んだのだから。
弱音を吐くわけにはいかない。
それに。
相変わらず雪穂の作る昼食にありつけるのもありがたかった。
酒造りが終われば俺に賄いをする必要もなくなるだろうと諦めていたのだが。
雪穂は自分の仕事だからと言って、畑仕事をする俺と中田さんの分も毎日用意してくれるのだ。
母屋で食べるのが主ではあったが、天気がいい日は畑の片隅にレジャーシートを敷いて、弁当仕立てにしてくれた昼食を食べるのもまた楽しかった。
弁当を広げて食べるなんていつ以来だろう?
子供のころ。
運動会とか遠足とか。
弁当が必ずいるときもうちでは。
買って来たコンビニ弁当の中身を弁当箱に入れ替えるだけで。
手作りの愛情こもった弁当なんて食べた記憶はない。
だから雪穂の弁当はその味だけではなく、愛情も感じられて殊更旨かった。
そうやって穏やかに過ごしていた矢先。
俺の中ですでに遠い過去に関わった人物の一人となっていた男と。
まさかの再会が待ち受けていた…。