まぁでもそこは大人の男の余裕を見せて、と。

「それはそうでしょうね。別にそれでいいんじゃないですか?」

あくまでも穏やかに紳士的に話す。
だが俺のそんな親切心もこの女には響かなかったようで。

「さっきの説明には棘がありました。ワイン以外のお酒に対する侮辱です」

睨みつけながら発する言葉までキツイ。
でもまだ。
俺は怒りませんよ…。

「侮辱だなんて…。心外です。私は別にワイン以外の酒を貶めたつもりはありませんよ」

「ワインが世界で一番愛されていると言いましたよね?それは裏を返せば他のお酒はワインより劣ると言っているようなものではありませんか?」

「そんなつもりはなかったのですが…誤解をさせたなら申し訳ありません」

俺は得意の営業スマイルを貼りつけてそう言った。
とはいえ、さすがの俺もそろそろ限界で。
肚の中穏やかではなかった。

すると女は引き下がるどころかさらに反応してきた。

「ワイン以外のお酒もお詳しいんですか?」

「いえ…他のお酒はあまり詳しくありませんよ」

「だったら…だったらなんでワインが一番なんて言ったんですか?他のお酒をよく調べてもいないのに」

確かにコイツの言葉には一理あるが…
そもそもなんでコイツにそこまで言われなきゃならない?
俺がワインについて語るのに、なんかコイツに迷惑かけたか?