「加賀見さん、でも…あの…」

「はい?」

言いかけた雪穂がその先を発しようとしない。
どうしたんだ?

何か…
引っかかっていることでもあるのか?
訝しんでいることがあるなら…
言ってもらえればいくらでも…君が納得できるように説明してあげる。

「雪穂さん?何か言いたいことがあるなら言って下さい。ここでは…あなたらしくいて欲しいんです…」

雪穂がハッとして顔を上げ、俺の目を真っ直ぐに見つめる。
本当に彼女の瞳の力に俺は弱い。

見つめられるとどうもその…
恥ずかしさとか愛しさとか…色んな思いが交錯して…
木偶の棒のように静止したまま動けなくなる。

「あの…以前に加賀見さんが…仰ってたことが…あの…」

俺が以前に言ったこと?
そんなのたくさんありすぎてどれかわからない。

「俺が言ってたことって…たくさんありますけど…どれ、でしょう?」

「だからそれはっ…!」

雪穂の白い顔がみるみるうちに赤く染まる。
そして何度も瞬きを繰り返し、目を俺から背けた。

その仕草は…まるで。
恥じらい?
なんで?

え?まさか?

いや…それはいくらなんでも自分に都合よく解釈しすぎだろ。
でもそれ以外に。
目の前の彼女の様子を言い当てられる言葉がみつからない。

俺のことを…
彼女が本気で考えてくれようとしている…。
恋愛対象として。
見てくれる…そんな嬉し過ぎる事態。