そんな諸々の思いを巡らせていると親方がやってきた。

「どや、中田。できたか」

「あっ、親方!はい。今年もちゃんと八本取れましたけん」

中田さんが嬉しそうに、斗瓶が乗った台を指さして言う。

そちらをちらりと見やってから、親方は満足そうに頷いた。
そして俺に向き直る。

「どやった。初めて搾りに参加して」

「…一言では…表現できませんが…。とにかく…感動しました…」

「感動、か…」

俺の言葉を反芻した親方の表情から、その感情をどう読み取ればいいのだろう?
あまりにも拙い感想だったのか?
でも…どういう言い方をしてもうまく自分の気持ちが伝えられない気がする。
それくらい。
言葉にできないくらい目の前で繰り広げられたものは壮大だった。

まだ酒造りの途中であるにもかかわらず。
今の段階で感動するには早いのか…、それとも…。

「あの…親方…。表現が乏しくて申し訳ありません…」

「いや。ええ。仕上がった酒を見て感動したんか」

「はい…万感の思いが込み上げて…、と言っても俺はまだ直接酒造りに関わってはいません。だけど…傍で皆さんを見てきて…どれだけ真剣に向き合っていたかを…。その思いの結晶が…形になって…だからっ…」

思わず声が上ずった。
話しているうちに今日までの出来事がめくるめく思い出されて。

涙が勝手に頬を伝った…。