「それが最高責任者である杜氏の仕事なんですよね…」
「あぁ…。親方は毎年毎年それはもう、色んなできの米で酒を造ってきたけんの。時にはほんに一瞬たりとも目が離せんようなこともあっただ。そいで親方は寝ずに心配な工程を見守り続けとったんじゃ…。昔は交替で夜勤しとったけん。たまたま見かけた親方がじっとタンクを見つめる姿は…なんとも言えんだったわ…」
自然の力が大きいゆえに。
その偉大な力の前で。
なす術もなく立ち尽くすのではなく…
必死に向き合う親方の姿。
「酒造りの責任のすべてが自分にかかってるんですもんね…」
「そげだ。もしその年の酒がうまくできんかったら…全部とは言わんでもひとつでも使えんタンクがあれば…。皆が食いっぱぐれる…。できあがった酒の量が少なければ予定していた量を納めえこともならんけんの。ひいてはうちの蔵の信用にも関わってくるんよ」
サラリーマンだったころには考えられない。
営業だったから自分のやりようで多少の損得は生じたが…
それも会社があってだから。
よほどの失態でも演じない限り給料は普通にもらえた。
査定で変わってくるのは賞与と、翌年度の昇給くらいだった。
自分の仕事のやり方が即給料に反映しないのだから、真面目にやるヤツとそうでないヤツが出てくるのは仕方がなかった。
でも。
ここでは一人でも怠ければ即、収入がなくなるかもしれないという事態になるんだ。
一人たりとも失敗が許されない。
本当に…
厳しい世界だと痛感した。
「あぁ…。親方は毎年毎年それはもう、色んなできの米で酒を造ってきたけんの。時にはほんに一瞬たりとも目が離せんようなこともあっただ。そいで親方は寝ずに心配な工程を見守り続けとったんじゃ…。昔は交替で夜勤しとったけん。たまたま見かけた親方がじっとタンクを見つめる姿は…なんとも言えんだったわ…」
自然の力が大きいゆえに。
その偉大な力の前で。
なす術もなく立ち尽くすのではなく…
必死に向き合う親方の姿。
「酒造りの責任のすべてが自分にかかってるんですもんね…」
「そげだ。もしその年の酒がうまくできんかったら…全部とは言わんでもひとつでも使えんタンクがあれば…。皆が食いっぱぐれる…。できあがった酒の量が少なければ予定していた量を納めえこともならんけんの。ひいてはうちの蔵の信用にも関わってくるんよ」
サラリーマンだったころには考えられない。
営業だったから自分のやりようで多少の損得は生じたが…
それも会社があってだから。
よほどの失態でも演じない限り給料は普通にもらえた。
査定で変わってくるのは賞与と、翌年度の昇給くらいだった。
自分の仕事のやり方が即給料に反映しないのだから、真面目にやるヤツとそうでないヤツが出てくるのは仕方がなかった。
でも。
ここでは一人でも怠ければ即、収入がなくなるかもしれないという事態になるんだ。
一人たりとも失敗が許されない。
本当に…
厳しい世界だと痛感した。