俺にとっては初めてとなる今日の搾り。
嫌が追うにも緊張が高まる。

「加賀見。そげん緊張しちょったら体が持たんぞ」

頭が笑いながら俺に声を掛けた。

「ですよね…」

「まぁ初めてのときは誰もがそんなもんだがの。端正込めて造った酒が出てくる瞬間は、子供が産まれるときみてぇに緊張するもんだわ」

そうだよな…。
長い時間を手間隙かけて造り上げたんだ。
当然、楽しみやら不安やら、数多の感情が押し寄せてくるに違いない。

「けど加賀見。搾りが終わったからいうて、酒造りが終わったんではねぞ。そっからまた長い工程があぁけん」

そうだった…。
搾りが終わった後、オリ引き、濾過、火入れ。それから寝かせる作業がある。
それを行ってから原酒を調整もしないといけない。

だからこれは中間地点であり、ゴールまではまだ果てしなく遠いんだ。
それでも。
造った酒と初めての対面。
俺は直接携わってはいないが、常に追廻をしながら皆の仕事を見てきた。
皆がどれほど真剣に造り上げたかを具に、
見てきたんだ…。

技術だけじゃない、心を込めて造っている姿を。
目の当たりにしてきた。

皆の思いが詰まった大切な酒。
どうか、素晴らしい酒でありますように。

俺は心の中で真摯に祈った。