急いで母屋に向かい、玄関を開けるとちょうど雪穂が靴を履いているところだった。

「あっ、雪穂さん。どこかへお出かけですか?」

「加賀見さん…。遅いから見に行こうと思って…」

「スミマセン…同僚と話してたんです」

「…同僚って…」

「大丈夫ですよ」

雪穂は疑いを孕んだ瞳で見ている。

「ちゃんと説明します」

食堂で親方と雪穂にさっきのことを話して聞かせた。

「そげか…。真瀬が謝ったんか…」

親方がそう言うと雪穂が怪訝な表情で言う。

「ほんとに反省してるのかな。表面上だけじゃないの?」

「うん…」

「だってあの人、若いけどしたたかなところがあるし、野心家だし…」

「お前がそう思うのは無理ねが…。あれはあれで仕事は真面目にやっちょる」

「そうかしら…」

そこで俺も口を挟む。

「親方が言われるとおり仕事は真面目ですよ」

「加賀見さんが大丈夫ならいいんです」

「案外、いい友達になれるかもしれません」

「えっ!」

「それはまあ…今後の真瀬さん次第ですけどね」

俺達の会話を親方が微笑みながら見守っていた事など知る由もなかったが、あの一件以来着実に雪穂との距離は縮まっている。
…ような気がする…。

俺の希望的観測かもしれないが…。