俺達の会話を静かに聞いていた親方が笑顔で言った。

「雪穂。加賀見は固い決意で来とる。ワシらはそれを支えてやればええ」

「お父さん…」

「大丈夫だ。ワシだけでねぇ。岩田も、恐らく他の奴等も…加賀見をちゃんと見てくれとるモンは必ずおる」

雪穂はまだ不安そうに瞳を揺らしている。

俺は彼女を安心させてやりたくて、笑顔で大きく頷いた。

「大丈夫、なんですか…？」

「はい。色んな経験が俺自身を成長させてくれる。だから…大丈夫です」

漸く雪穂にも笑顔が戻る。
その顔を見られるだけで頑張れる…。

これからもずっと、君が笑顔でいられるようにしたい。
そのためなら辛い目に遭おうとも堪えられる。

誰かのために生きるなんてしたことのない俺だったが…
今は迷わず彼女のために生きていると言える。
今回の事件は苦い経験ではあったけれど。
それすらも彼女と俺の縁を強くしてくれた気がして…

きっとこの先。
数々の災難が降りかかったとしても。
俺は彼女を想い、苦しみを喜びに変えていけるだろう。

そんな存在に出会えたのは奇跡で…
俺の人生を変えてくれた彼女に感謝している。

俺の未来は必ず明るく照らされているに違いない。
彼女の傍にただ、いられたら…
きっとそれだけで。