雪穂は驚いたように瞳をいっぱいに見開き俺を見た。

「そんなふうに…考えたことはありませんでした…」

「色んな角度から見てみると、見えなかったものが見えるかもしれません…」

「そう…ですね…。あたし…田舎の嫌な部分ばかりに気をとられて…。なぜこうなってしまったのかなんて、考えられなくなってました…」

「雪穂さんは…ここで辛い目に遭われたから…無理もありません」

「ここで生きていくには…人と同じようにしなければいけません…。少しでも違うことをすればたちまち標的になるんです…。だから意に染まないことでも我慢して…作り笑顔で…」

「無理をしているうちにそれが当たり前にできるようになった人達は、ここに残っているんじゃないでしょうか?」

「ええ…。きっと…出て行きたくてもできない人達は…なんとかして住み続ける術を見出だしたのかもしれません…」

そうやってずっと生きてきた人達と、うまくやっていかなければならないんだ。

「どこにでも色んな人がいます…。でも、どこにいても要は自分次第なんだと思います。俺はここで…生きていきたい…」

彼女の故郷で。
彼女と共に…

笑ったり泣いたり、あらゆる感情を共に感じていきたい。