家に戻り車から降りると、母屋からバタバタと足音が聞こえた。
玄関から慌てた様子で雪穂が出て来る。

「加賀見さんっ！」

「この度はご心配をお掛けして…」

「そんなっ、加賀見さんはヒドイ目に遭ったんです！あなたが謝ることないです！」

雪穂は目に涙を溜めていた。
あぁ…俺は…
自分の愛する人をこんなにも苦しめてしまったのか…。

「でも、俺がここに来たのが原因で今回のことが起きたのは事実です…。俺のわがままで…親方にもあなたにも余計な心配を掛けてしまった…」

「だから…だから田舎はいつまで経っても発展しないんです…。新しいことを受け入れられない体質。余所者扱い…。周りと違う人をハブする、村八分…。それが改まらない限り、田舎はどんどん過疎化が進んで若い人達や他所から来る人がいなくなってしまうんです…」

確かに田舎の体質はそうかもしれない。
でもそうしなければ守れないものがあったのかもしれない。
新しいことを受け入れ、余所者を受け入れたことで壊された歴史があったのかもしれない。

だから一概にそれが悪だとは言い切れないのではないだろうか。

「田舎の人達は皆…自分達が培ってきたものを守るために…そうなってしまったのかもしれません…。もしかしたら…新しいことや余所者を受け入れたがために、自分達が大切にしてきたものを失ったのかもしれません」