雪穂が俺を心配して自ら警察署に…

「申し訳ありません…。雪穂さんにまでご心配をお掛けして…」

「あれがあそこまで何かに熱くなっとる姿を久々に見たのぅ」

「そうですか…」

「あんなことがあってから…ここにおるのが辛うてな。一時は人形みたいに感情が欠落した生活しとっただ…。それが…昔みたいに明るくなって…」

彼女が元の自分を取り戻しかけている。
これが嬉しくないはずがない。

「雪穂さんが自分らしく生きられているなら…今回の件は満更災難でもなかったですね」

「加賀見…。アンタはいっつも雪穂が優先だの…」

「え…」

「アンタの行動原理は全部、雪穂ありきやないのか?」

そんなことまで…見抜かれて、いた。

「まさか!違いますよ!」

そう言ってはみたが。
親方にはすべてお見通しなのだろう。
でも半人前以下の俺が。
彼女に対等に向き合うのは烏滸がましい。
もっともっと上へ行かなくては。
彼女の立場を磐石にしてあげられない。

俺がここで皆に認められて初めて。
俺を連れて来た彼女の立場が守られるのだから。

「まぁそれは二人の問題だけん。ワシがとやかく言う気はねぇ。仕事は…やりにくいかもしれんが頑張れな」

「はい…。このご恩は…仕事で必ずお返しします…」