階段を降りたところに親方が立っていた。

「親方っ!」

思わず駆け寄り親方に抱きつきそうになる。

「加賀見…災難だったの…」

「いえっ!…親方が…俺を助けるために奔走してくれたと…聞きました…」

「すまなかった。ワシがもっと目を光らせとかにゃいけんだったに…」

「そんな!俺もまさか真瀬が…ここまでするとは思ってもみませんでした…。だから親方が心を痛めることはありません…」

「とりあえず家に帰ぇか」

親方の車に乗り、帰路についた。
車の中で親方から今回の詳細を聞く。
粗方俺の想像と違わない内容だった。

「それで…奴等の処遇だがの…」

「はい…」

「アンタには信じられんかもしれんが、あの三人は昇格させる」

昇格?
こんな悪どいことをした連中を?

「加賀見…前にも言ったがこっちのモンは僻みや妬みを持っとるモンが多い。今回の件で奴等をクビにするのは簡単だ。だがな…奴等の恨みがまたアンタに向く可能性がある。それならむしろ昇格させて仕事でえらい思いさせたがええ」

「……」

「まず迫田と真瀬は道具廻しにやる。今の道具廻しから二人を上に昇格させて、それに倣いすべての担当から二人ずつ一つ上に行かせる。門脇が追廻のリーダーになる…」