親方が…俺を…
信じてくれて、いた…。

「杜氏はあなたがここに連れて来られてからすぐに従業員の方々に連絡なさったそうです。二人の従業員は中上家に連れて来られていました。私が赴いたときはすでに二人とも観念した様子で。すべてを正直に話してくれましたよ」

「やはり真瀬の陰謀だったのですね…」

「浅はかこの上ない。田舎の警察だとなめてもらっては困ります。いくら証言者が二人いても、それだけで犯人と決めつけるのは短慮過ぎます。もちろん、私の教育不足です。今後は二度とこういった不祥事が起きないよう、署員を徹底指導致します」

「田舎独特の僻み、妬みがあるとは聞いてました…」

「あなたには何の罪もありません。僻みも妬みも、それをする者の心が狭いのです。そういう心はやがて自分をも貶めるのだと、わかってくれればいいのですがね」

本当にそのとおりだ。
醜い心は自分をも駆逐してしまう。
人を呪わば穴二つ。
相手を貶めればそれはいつか必ず自分にも返ってくる。

そういう心の人間にだけは、なりたくない。

「お疲れ様でした。杜氏が…迎えにいらしてます。本当にこの度は申し訳ありませんでした」

真摯に頭を下げる彼に会釈して、俺は警察署を出た。