翌朝。
まんじりともせずに、それでも時折うつらうつらはしていたように思う。

人間どんな状況でも眠れるもんだと我ながら感心する。

生の食パン一枚と紙パックの牛乳。
そんな味気ない朝食を義務的に胃に流し込む。

いつも食べている雪穂の朝食が食べたい…。
再び食べられる日が来るのだろうか…。

ダメだ。
怯んじゃいけない。
俺は無実だ。
毅然としていればいいんだ。

マイナス思考を振り払い、冷静な思考を取り戻さなくては。

そこへ看守がやって来た。

「加賀見。出なさい」

こんな時間からもう始めんのかよ…。

聞いたことはあったが、警察は被疑者を追い詰めるために早朝だろうが深夜だろうがお構い無しに取り調べるんだな。

昨日も連れて来られた取調室に入る。
今日の警察官は昨日の人ではなかった。

制服を着ておらず、普通のスーツ姿。
一見サラリーマン風で、かつ俺とさほど年齢も変わらない感じだ。

「加賀見さん。昨日はうちの署の職員が失礼な事を申し上げたようで、お詫びします」

えっ?

「驚かれるのも無理はありません…。きちんとした調査もせぬまま、疑いをかけたこと、深謝致します」

「あの…どういう、ことなんでしょうか?」