俺がそう言うと。
警察官はニヤリと口角を上げた。

「まぁ、アンタの気持ちもわからんではないがね。新天地でやっていこう、いう矢先だけん。しかも彼女にもええところ見せたいしなぁ」

なんの話だ?
彼女は関係ないだろうが…。

「何のことかわかりませんが…」

「中上の出戻り娘の尻を追っかけて、東京から来たんだろ?えらい物好きやの」

なんだ…コイツ…
よりにもよって彼女を貶めるような…
彼女を…侮辱するな…!

「雪穂さんにお願いして酒蔵で働かせてもらってはいますが、彼女とはそんな関係ではありません」

「そげらしいの。真瀬さんと付き合うとるのが気に食わんで殴るとは…呆れてものも言えん」

なんだと?
雪穂と真瀬が…
付き合ってるだと?

「顔色が変わっただな。図星か」

「違います…」

「何が違うだ」

「殴ったのは同僚の門脇さんです。俺は迫田さんと二人で門脇さんを止めたんです。それだけです…」

「アンタな、嘘つくならもっと上手な嘘つかんね。その迫田と門脇もアンタが真瀬さんを殴ったと証言しちょるんだで」

衝撃で言葉を失った…。
あの二人が…
迫田と門脇が…
俺を犯人と証言した、だと?

なぜそんな嘘の証言をした?

俺は意味がわからずただ俯く。

「ほら、もう観念したらどげかね?幸い初犯だし、アンタが罪を認めて謝罪すれば真瀬さんも被害届を取り下げる、言うてくれとんじゃ。穏便に済ませてくれようもんを有り難く受け取らんね?」